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  国連本部を過ぎて、バスはゆるやかに左へカーブしてミッドタウンの心臓部に入ってきた。グレイラインの市内観光もフィナーレを迎えようとしている。ガイドは、ターミナルに戻る前にロックフェラーセンターで希望者だけ降りても構わないと言う。私達3人は"五番街ブラ"をすることにし、ガイドに感謝の拍手を送りバスを降りた。
  五番街の西48丁目から52丁目の区域は、必要なものなら何でも揃うロックフェラーセンターと呼ばれている。中心にある窪んだ広場はアイススケート場であった。万国旗が広場を取り囲み、五番街に通じる道の両側には噴水があり、四季の草花が植えてある。 仰いでみると、70階建てのRCAビルがそびえ立ち、見るからにビルの谷間のプロムナードといえる。きょうは福井氏がニュージャージーのユーザーにあいさつに行かれたので、昼間は橋本氏、一瀬氏とともの3人終始一緒であった。実に人間関係が穏やかで波が立たなかったといえる。決して福井氏がおられると嵐の様相というのではない。何かアクセントに欠けるといったニュアンスである。4人家族が3人になったときのような感じに似ている。
  私達は五番街の「ダルトン」という本屋に入ってみた。日本の紀伊国屋や旭屋書店などと同じようなレイアウトであったが、書棚を見ていると店員が「何か?」と寄ってくる。私は店員だと思わなかったので驚いたが、咄嗟に息子が図書館から借りてきた英文和訳をした絵本を思い出し、それを是非におみやげにしようと思った。店員に本の名と表紙のイメージを説明したが、以前はあったが今はないという。

ロックフェラーセンターにて・・・一瀬氏と

しかたがないので一瀬氏と橋本氏にはホテルへ先に帰っていただいて、別の本屋を探すことにした。
  オフィスが退けて家路を急ぐ人達、夜の町がこれからはじまろうとしている。歩道のわきにはハンバーガー屋に代わって、燭台や装飾品などを売る黒人が往来を見つめている。その黒人のうしろには、日本製あるいは台湾製と英語で印刷されたダンボール箱が置いてある。ニューヨーカー達は、彼らには振り向きもせず足早に歩いている。しばらく歩いたところの本屋に入ってみたが、答えは同じであった。私はあきらめてホテルに帰ることにした。
  部屋に入ると、ベッドの上に今朝ボーイに頼んだズボンのプレスができ上がっていた。買ったおみやげを整理し、新しいネクタイをしてロビーに降りた。今夜は橋本氏のはからいで住金のフジサワ氏、住商のヒラ氏と夕食をともにすることになっている。