目次へ戻る 第2章の先頭へ戻る 前ページへ戻る 次ページへ進む 第4章へ進む
20

 いつかの9月の僕とあなたの
      幸せだったころを想いだそうよ
 師走も押し迫ったこの冷たい日に
    楽しかった時を想い出すのはいいことだ・・・


  有名なTry To Remember(トライ・トゥ・リメンバー)の曲ではじまった。この曲がこのミュージカルのテーマソングだったとは。過去の若かりしころの思い出を、語り手の男性と芝居の「黒子」のように壁に立ったり、雑役のように動き回る男性、それにピアノとハープの伴奏だけで進めていく。語りがしゃべっている時は他のキャストはピタッと一時停止する。緩急のリズムがあり、英語は理解できなくとも見ていて実に楽しい。
  一瀬氏は、女の子の役をしていた女性が好みのタイプらしく、劇場を出てイタリアン系のレストランへ入ったとき「かわいかった」「かわいかった」と連発されていた。そのレストランでもおもしろいことがあった。
  下町のお食事処といったところか、マネージャーとは思いがたい背の高い男が注文を取りに来た。よそ者は来るなという素振りのようにも見えた。バドワイザー4つ、バンバーカー3つ、それとチキン××1つを注文した。チキン××を注文されたのは福井氏であった。するとその男曰く「前にも日本人が頼んだが全部食べられなかった。だから他のものを注文したほうが無難だ」と。しかし、私達は強引に注文をした。福井氏は"Anyway I Try"「とにかくやってみる」という精神でないとダメだと言われる。それ以後、私達の間では「エニーウェイ・ユー(アイ)・トライ」という言葉が流行ってしまった。

1960年から続いているミュージカル THE FANTASTICKS のシアター2階資料室で

私達は前に来たという日本人のためにも、意地でトライしてみたが、4分の1ほど残ってしまった。まことに残念であった。

何かが足りないニューヨーク

  ニューヨークヒルトンのベッドは、シングルベッドのせいか寝つきが悪かった。1、2時間ごとに目が覚め、結局起きることにした。時計を見ると3時半であった。これといってすることもないので洗濯をすることにした。前に洗濯をしたのはアトランタの時で、下着のストックは少なくなっていた。携帯用の洗濯ロープはたいへん役に立った。ヒルトンホテルのバスルームはそんなに新しくなく、普通の日本のビジネスホテル風である。だから、シャツ2枚、パンツ3枚、靴下3足、それにハンカチ2枚を干すといっぱいになってしまった。ハンカチは鏡にピタッと張りつけた。念のためメイドに洗濯物をそのままにしておくようメモをしておいた。