目次へ戻る 第5章の先頭へ戻る 前ページへ戻る 次ページへ進む あとがきへ進む
45

  うっすらと白色に染まるシアトルの山の手を後にして、ジャンボは東京国際空港成田へと飛び上がった。
  「さようなら、アメリカ」
  "GOOD BY! U.S.A."

    おお ビューティフル!
      果てしなき空の下
         琥珀色の穀物畑の波が続くよ
    実り豊かな大平原の彼方
       紫色の山なみがそびえているよ
    アメリカ! アメリカ!
       神の恩寵  汝の上にあり
    Oh!Beautiful America!

  このツアーでの出来事、体験したことが脳裏をかけめぐる。連想ゲームのように情景が浮かび、次々とひとコマひとコマ画面が変わっていく。ひとつのシーンが永く写っている時もある。そのシーンと現実の視野とがラップして、この旅行と無関係のまた別のことを考えていたりする。
  機内のスクリーンでは、"Shoe Dance"というアメリカ映画をやっている。都会で育った青年が保守的な田舎町の高校に転校して来てから、次々と若者達の旋風が町中に起きる。やがて石頭の牧師もわが娘の反発を契機に軟化し、大人達、子供達が一緒になってダンスを踊りながら幕を閉じる。現代のアメリカを風刺した映画である。

  今の私達4人は、ともに先代(会長、社長)が健在である。世襲の経営者にとっては、世代交代はたいへん重要なことで、対外的にも社内においても、また実務面でも、旋風や反発のなきよう立派に努力せねばならない。現在の日本に、初代のわが祖父が生きていたならば、どのように対応しているだろうか。一世代前の私達、管工機材業界ではこのようなツアーを企画することすら考えなかったことである。ひょっとすれば、この「アメリカ・スタディ・ツアー」は先代、先々代への建設的な旋風、反発かもしれない。(完)



アトランタのサイクロラマ館の前にて・・・危険な4人 左から橋本氏、一瀬氏、福井氏、私